【書籍情報】
タイトル | ふうちゃんとにぃちゃん先生 ―― ふうちゃんのはつはる |
著者 | 横尾湖衣 |
イラスト | エルクポット |
レーベル | 詠月文庫 |
価格 | 200円 |
あらすじ | お待たせしました!「ふうちゃんとにぃちゃん先生シリーズ」第3弾です。 子犬ふうちゃんが体験する初めての春の冒険譚「はつはる」。子犬ふうちゃんは、いろいろなことを知りたくて家の中でいろいろなイタズラします。ある日、にいちゃん先生の不注意で、玄関のドアが開いていました。ふうちゃんは、外の世界を見たくて飛び出します。 |
【本文立ち読み】
ふうちゃんとにぃちゃん先生 ―― ふうちゃんのはつはる
[著]横尾湖衣
[イラスト]エルクポット
目次
◆「ふうちゃんのはつはる」
一、とある春の雨の日
二、ふうちゃんの脱走と冒険のはじまり
三、ふうちゃんと蝶々
四、冒険のおしまいとふうちゃんの成果物
◆「ふうちゃんの体験入学」
一、ふうちゃんとスズメの子
二、学校ってなぁに?
三、メダカの学校
「ふうちゃんのはつはる」
一、とある春の雨の日
ふうちゃんの名前は、ふうた。パグ犬の「ふうた」です。これはふうちゃんが、まだ小さかったころのお話です。
寒い冬が終わり、ふうちゃんは生後五ヶ月になりました。あたたかい春が来たというのに、毎日雨ばかり……。ふうちゃんは退屈で、ベッドの上で大きなあくびをしました。
「にぃちゃんに抱っこしてもらって、お外の空気吸いたいなぁ」
ふうちゃんは窓の外を見ました。「これじゃあ、無理だなぁ」と、空の方を見上げながら思いました。そのとき、ふうちゃんはひらめきました。
「あっ、そうだ! にぃちゃんのスリッパがあった」
ふうちゃんはベッドの下にもぐり込み、大好きなにぃちゃん先生のニオイが染みついているスリッパを持ってきました。ふうちゃんは、にぃちゃん先生が足を入れているのを思い出しました。ふうちゃんも入れてみましたが、にいちゃん先生のように持ち上げて歩くことができませんでした。
「うーん、どうしたらいいんだろう?」
ふうちゃんはスリッパを見ながら考えました。そこで、ふうちゃんは鼻を入れてみることにしました。しかし、ふうちゃんはパグ犬なので、柴犬とかビーグル犬のように鼻先をスリッパに入れることができませんでした。ふうちゃんはスリッパの入り口が小さいから、鼻先が入らないのだろうと思いました。そこで、スリッパの入り口を広げてみることにしました。
ふうちゃんはスリッパの入り口を広げるつもりが、いつのまにかスリッパとの格闘になってしまいました。そしてスリッパの先っぽをかみ始めました。
「ん? この歯ごたえいいなぁ」
ふうちゃんは、スリッパの先っぽをクチャクチャかみました。しばらくの間かんでいましたが、ふうちゃんは飽きてきました。
「カミカミしていたら、ぼく、のどが乾いてきたなぁ」
ふうちゃんはキッチンの方へ歩いて行きました。途中、トイレの前にトイレットペーパーが置いてありました。それはにぃちゃん先生が、あとでトイレの棚に収納しようと思って置いてあった物です。ふうちゃんは、にぃちゃん先生がふうちゃんのお尻を拭くとき、そのトイレットペーパーを引っ張ってクルクルさせていたのを思い出しました。
「あのピロンとなっている紙の先を引っ張ると、紙がクルクル伸びるんだったっけ? あれって、どのくらい伸びるんだろう?」
ふうちゃんは、ちょっと伸してみたくなりました。そう思ったら、ふうちゃんはトイレットペーパーの端を口にくわえて、ヨイショ、ヨイショと伸しました。勢いよく引っ張ると、トイレットペーパーがクルクル回り、ふわふわふわぁと紙がリボンのように宙に舞いました。「おもしろい! もっと引っ張ってみよう」と、トイレットペーパーの端を持って家の中をあちこち走り回りました。
トイレットペーパーはふうちゃんによって、右に伸びて左に伸びてまた右に伸びて……というように伸されていきました。ふうちゃんは一仕事終わって、ふぅとひと息つきました。
「あのクルクル、こんなに伸びるんだぁ」
ふうちゃんは伸びたトイレットペーパーを眺めて、ふとにぃちゃん先生と見た映画を思い出しました。
「何かに似てると思ったら、そうか、ミイラっていうのに似てるんだ。あの人、間違って自分に巻き付けちゃったんだね」
ふうちゃんはそう思いました。「そういえば、ぼくお水を飲みに行くところだったんだ」と思い出し、ふうちゃんはキッチンにいってお水をペロペロと飲みました。お水を飲んでいると、「うわぁぁぁぁー」という、にぃちゃん先生の叫び声が聞こえました。
「大変だ! にぃちゃん大丈夫かな?」
ふうちゃんは猛ダッシュで、にぃちゃん先生の叫び声が聞こえた方へ走って行きました。
***
叫び声が聞こえた方に行くと、研究室から出てきたにぃちゃん先生が立っていました。にぃちゃん先生がふうちゃんに気づきました。
「ふうたぁ、イタズラしたな」
ふうちゃんはにぃちゃん先生と目が合いました。これは叱られると思い、ふうちゃんは尻尾と耳を下げました。そして、ギュッと目をつむりました。しかし、にぃちゃん先生はしゃがんでふうちゃんの頭をやさしくなでました。ふうちゃんは意外に思い、そうっと目を開けてみました。
「ふうた、楽しかったかい?」
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