女子大生、授業でライトノベルを書く。①

【書籍情報】

タイトル女子大生、授業でライトノベルを書く。①
著者実践女子大学短期大学部 ライティングゼミb受講生
おみそしる/清水うさぎ
イラスト猫田苺/大野ふーり
レーベルアプリーレ文庫
価格400円
あらすじ悪役令嬢、転生、恋、剣と魔法…ライトノベルとは何だろう?というところから学んだ現役学生たちの珠玉の作品集。

ねむねむ彼女とふわふわ彼氏の日常(著・おみそしる/イラスト・猫田苺)
社会人の望月は同棲中の彼氏がいる。しかし、ある朝アラーム音で目覚めたら彼の姿が隣になくて――だけど声はする? 彼の身に一体何が!? そしてラブラブな二人の仲にちょっぴり亀裂が!!

いとこの話によると彼女の妹は悪役令嬢らしい。(著・清水うさぎ/大野ふーり)
ヴァイオレット侯爵家長女ミシェル・ヴァイオレットは、いとこのカミラに妙な話を打ち明けられた。「私には前世の記憶がある」らしい。しかも「妹のセレーナは悪役令嬢、断罪回避のため令嬢として教育したい」らしい。
ゼンセってなに!? アクヤクレイジョウってなに!? ミシェルは、思いのほか根が深い問題を抱えるいとこ姉妹のために奮闘することに!

【本文立ち読み】

女子大生、授業でライトノベルを書く。①
[著]実践女子大学短期大学部 ライティングゼミb受講生

はじめに

2023年、実践女子大学短期大学部『ライティングゼミb』の授業で髙瀨真理子教授指導の元、学生たちがライトノベルを執筆しました。
ライトノベルとは何か、というところから考え、プロット、箱書きと段階をふんで完結した作品たちの一部を、短編集にまとめました。

目次

ねむねむ彼女とふわふわ彼氏の日常(著・おみそしる/イラスト・猫田苺)
いとこの話によると彼女の妹は悪役令嬢らしい。(著・清水うさぎ/大野ふーり)

ねむねむ彼女とふわふわ彼氏の日常
[著] おみそしる
[イラスト]猫田苺

目次

プロローグ
第一章 「不思議な朝」
第二章 「食いしん坊」
第三章 「亀裂」
第四章 「涙の朝」
エピローグ

【登場人物】

登場人物1……花巻望月(はなまきみつき) 女、二十四歳。
登場人物2……渡辺煌兎(わたなべこう) 男、二十四歳。

脇役1……工藤千桜(くどうちはる) 女、二十四歳。

プロローグ

ピピピ、ピピピ―ピ、ピピピピーー
アラームの音って本当に苦手。起きろ! って急かされてる気分にしかならなくて、むしろ起きる気なくなる。はあうるさいな、アラーム止めるか。めんどくさい。起きようっと。

第一章 「不思議な朝」

「ふわぁぁぁ、ねむ。今日で九月も終わりかぁ」
そう呟きながら体を起こす望月。
「あれ?」
花巻望月《はなまきみつき》二十四歳、編集者として働いている。そんな望月には付き合ってもうすぐ三年経つ彼氏がいる。彼氏、渡辺煌兎《わたなべこう》は望月と同い年で、サラリーマン。二人は同棲し始めて約1年半。仲が良く毎晩同じベッドで寝ている。でも今日は隣に煌兎がいない。
「先に起きたのかなあ。仕事休みなのに早起きなんて珍しいなあ―……」
そんなことを思いながら、リビングにいるのかと寝室のドアを開けるが、そこには煌兎はいない。出かけた様子もないし不思議に思う望月。
「煌兎――?」
煌兎を呼んでみると、
「――望月―……」
「?」
どこからか望月を呼ぶ聞きなれた声がする。望月は疑問に思い、家中を歩き回る。
「ん? ぎゃあああ!!! な、なに……―――?」
望月の驚く声とともに、部屋の隅っこから真っ白くふわふわしたウサギが出てきたのだ。
「え、なんでウサギ!? 意味わかんない!!」
驚きながらも恐る恐る近づき、
「どうしたの? どこから入ってきたの? まあ言葉が通じるわけないか(笑)」と望月はウサギに話しかける。
しかしウサギは望月に怯えているのか、耳がピン! と立ち、体がびくびく震えているだけで何の反応もない。
「うーーん―……。しょうがない。しゃべれるわけもないし。なんでうちにいるのかはわかんないけどそっとしとこ! それよりも煌兎どこ行ったの!!」
望月は煌兎を探すため立ち上がり、ウサギに背を向けた。その瞬間、
「望月! 俺だよ! 煌兎!」
後ろから聞きなれた声が聞こえる。でも後ろにはウサギしかいないはず。ゆっくりと後ろを振り返ると、やはりそこにはウサギしかいない。
「うん? まさかウサギがしゃべったとかそういうこと?(笑)」
望月がふざけ半分で言うと、
「そうだよ。しゃべれるんだよ。てか俺なんだってば!」
さっきと同じ聞きなれた声がウサギから聞こえる。
「え、どういうこと?」
望月は動揺と困惑でへなへなと座り込んでしまった。

・続きは製品でお楽しみください

いとこの話によると彼女の妹は悪役令嬢らしい。
[著]清水うさぎ
[イラスト]大野ふーり

目次

プロローグ
第一章 ゼンセってなんですか
第二章 改革は難航中
第三章 弟ノエルと憂鬱な休日
第四章 謎の少年バドと絵の秘密
第五章 見るということは
第六章 私の前世 SIDEカミラ
第七章 狂いはじめる歯車
第八章 大事な人 SIDEノエル
第九章 正しさとは
第十章 私は… SIDEカミラ
第十一章 本当の家族に
エピローグ

【登場人物】

ミシェル・ヴァイオレット:ヴァイオレット侯爵家長女
カミラ・ハイドランジア:ハイドランジア公爵家。ミシェルの従妹

セレーナ・ハイドランジア:カミラの妹
ノエル・ヴァイオレット:ミシェルの弟
アルバート・サンライト(バド):ノエルの友人
ルイス・ハイドランジア:カミラとセレーナの父で公爵

第一章 ゼンセってなんですか

現実は空想世界よりも余程稀有なものである。
いつだったか読んだ本に出てきた言葉。
しかし。
「ミシェル、私、前世の記憶があるの。ここは……漫画の世界なのよ」
さすがにこれは稀有が過ぎるのではないだろうか。
突然投下された爆弾発言にミシェルは現実逃避のようにそう思った。
ミシェル・ヴァイオレット。緑豊かなこの国、ブルーム王国の侯爵家に長女として生を受けた齢一八の女である。
白銀というには少しくすんだ鈍色の髪に薄紫の瞳をもつ彼女は一度ゆっくり瞬きをして、今しがた世にも不思議な発言をした目の前に座る女を見る。
ミシェルが見つめた女の名はカミラ・ハイドランジア。深い藍色の髪と瞳をもつ、この国の三大公爵の一つハイドランジア公爵家に生を受け、齢一七にしてその美しさや教養の良さから「令嬢の鑑」と囁かれるほど完璧な公爵令嬢であり自慢の従妹。
というのが今までミシェルが彼女に抱いていた印象であるが、改めなければならないかもしれない。
ここは、ヴァイオレット侯爵家がもつタウンハウス。その庭である。
そして、目の前に広がるのは、侯爵家のシェフが腕によりをかけて作った菓子。
どうみてもお茶会で、やれ最近この店がおすすめだの今の流行りはこのようなドレスであるだの、世間話に花を咲かせる時間であり、曲がり曲がっても、「ゼンセの記憶を…(略)」などという意味不明な話をする場ではない。
「カミラ、ごめんなさい。意味が分からなかったからもう一度言ってくれないかしら」
「ええ。私には前世の記憶があるの。そしてここは「花乙女の君」という漫画の世界であると気づいたのよ」
もう一度言ってもらってもやはり理解不能であった。
カミラの頭は大丈夫だろうかと至極まともな心配をミシェルがする傍らで、カミラは少々興奮気味に、己の事を語りだした。
どうやら、ゼンセとは前世と書き、今生きている世界より前に生きていた世界のことだという。そして、マンガとは絵だけのお話であるらしく、物語はある日伯爵家に引き取られた庶民の女の子が王立フローラルアカデミーに入学し、そこで出会った第一王子アルバート・サンライト殿下と恋仲になる山あり谷ありの恋愛物語なのだそうだ。
と説明されたは良いが、はっきり言ってミシェルはカミラの言っていることの半分も理解していなかった。いや理解したくなかったという方が正しい。
とりあえず聞いてますよアピールで所々相づちしていたら、この後更なる爆弾発言を聞くことになってしまった。
「ここまでがマンガのストーリーなのだけれど、問題なのはここからなのよ。この物語には、ヒロインをいじめる王子の婚約者がいるの。いわゆる悪役令嬢。その子の名前がセレーナ・ハイドランジア」
その名前を聞いてミシェルは再度現実逃避をしたくなった。
セレーナ・ハイドランジアはカミラの妹であり、ミシェルのもう一人の従妹。カミラの深い藍色とは対照的にライトブラウンの髪に薄群青の瞳をもつ少女である。
これともう一人、ミシェルの弟であるノエル・ヴァイオレットを含む4人は実の兄弟のように仲が良い。さしずめ、長女がミシェル、次女がカミラ、長男がノエルで三女の末っ子がセレーナといったところだ。
本日も、セレーナはヴァイオレット家に来てすぐ、ノエルの手を引いて遊びに行ってしまった。
しかし、アクヤクレイジョウとは文字にすれば『悪役令嬢』であると考えられるが、『悪役』の『令嬢』とはなんとも不名誉な群名である。
「しかも、セレーナは、傲慢で傍若無人。マナーもなっていない権力を振りかざすだけの令嬢で王子からは嫌われていていた。結果、学園の卒業パーティーでいじめが露見して婚約破棄+断罪されてしまうの」
ミシェルは一瞬眉間にしわを寄せる。
さすがにおふざけが過ぎると感じたからだ。
しかし、カミラのその深い藍色が映し出しているのは冗談ではなく悲壮と焦燥。
とてもふざけているようには見えなかった。
ミシェルの背中にツゥーっと嫌な汗が流れる。
空想の産物。カミラの被害妄想。
―それで片付けてしまって本当に良いのだろうか。
頭の中でもう一人の自分が疑問が問をかける。
ひとまず落ち着きたくて、ミシェルは側にあったティーカップに口をつけた。
喉を潤した事で少しだけ肩の力が抜ける。
カップをソーサーに置き、大きく息を吐いた。
「カミラ、結局あなたはなにがしたいの」
「もちろんセレーナの未来を変えたい。前世では、『まあ当然の報いでしょ』って思っていたけれど妹が断罪されるなんて嫌だもの」
「具体的にはどうするつもり」
「セレーナを完璧な淑女にするわ」
カミラは、セレーナが嫌われる理由が傲慢で傍若無人でマナーもできず権力を振りかざすだけの令嬢であるからと語っていた。
つまり、教養を身につけさせれば少なからず断罪という悲劇は回避できるという考えなのだろう。
ミシェルは今まで語られてきたことを頭の中で整理する。
そして、最も疑問に思っていたことを口に出した。
「じゃあ、聞くけれど前世の事も含めて私に話した理由はなに」
そう。問題はここなのである。
今までの話をカミラがミシェルにする理由がない。
前世という記憶を呼び起こし、セレーナの未来を知り、そしてそれを回避するための方法まで立てているのであれば後は実行すれば良いだけだ。
わざわざミシェルに事の次第を話す必要性は感じない。
「巻き込むのは悪いと思うわ。けれど、セレーナが王子と婚約するのは十四歳のときなのよ。私も前世を思い出してから、少しでもと思って知り合いに家庭教師を頼んだりしたけれど、皆に匙を投げられてしまって。はっきり言うとセレーナの教養はかなり低いままなの」
どのような経緯で婚約が決まるのかミシェルにはわからないが、セレーナは今現在十三歳。アルバート王子もセレーナと同い年であるため婚約と言うのは十分あり得る。
しかし家庭教師が匙を投げるレベルの教養の低さでは将来王妃は務まらない。
なぜなら、王子の婚約者となれば王妃教育も受けなくてはならないからである。
通常の教養が低いのに王妃教育など無理な話だ。
「だから、姉である私が直接セレーナにレッスンをつけようと思ったのだけれど、あまりにも学ばせなければならないことが多くて」
それで、ミシェルにも協力してもらいたいということなのだろう。
「ハイドランジア公爵様に協力は……ちょっと難しいかしら」
「ええ。お父様に期待はできないわ。私がなんとかするしかないのよ」
やるせないといった顔をしながら呟くカミラに同情する。
実際、ハイドランジア家の家庭環境は良いとはいえない。
母親である、公爵夫人はセレーナ生んでからすぐに体調を崩し、現在も療養中のため家にいない。ハイドランジア公爵は娘二人に無関心。欲しいものは買ってもらえる。やりたいこともやらせてもらえる。だけれど愛はもらえない。
本日のようなヴァイオレット家への訪問も、ハイドランジア家の家庭環境を知ったミシェルの両親が提案したものだ。
カミラの言うとおり公爵に期待はできない。
そうなれば、やはりカミラがなんとかするしかなくなってくる。
「お願いミシェル。最後まで付き合ってくれなんて都合のいいことは言わないわ。目処が立つまででいいから協力してくれないかしら」
これで、カミラが十人もいれば何ら問題ないだろうが、さすがに同じ人間が増加する事など不可能である。
となれば、成人である十八を超えていて、カミラが気負う必要もないミシェルは頼るのにうってつけなのだろう。
(仕方がない。乗りかかった船だものね)
ミシェルに、ここでカミラを無下にするという選択はない。
元々、ミシェルにとってカミラもセレーナも大切な存在なのである。
どれだけカミラの話が荒唐無稽であろうとも信じてやろうではないか。
「カミラ、私にできることは協力するわ。」
「ありがとう」
こうしてミシェルとカミラによるセレーナ改革作戦は開始したのである。

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