最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part4

【書籍情報】

タイトル最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part4
著者秋谷イル
イラスト秋谷イル
レーベルペリドット文庫
価格200円+税
あらすじ「最悪の魔女スズラン」本編では語られなかったエピソード。スズラン達の日常の物語をお楽しみください。聖都シブヤの大図書館で暮らす「ぐ〜たらの神子」シクラメン再登場。髪を染め色ガラスで瞳の色も変えた彼女が下級貴族に変装して行く先は?
一方、ココノ村ではクルクマと老人たちが結託し、頑なに髪型を変えようとしないスズランの謎を解き明かそうとしていた。この他、スズランの家の隣に住む老人クロマツのエピソードと本編二巻で詳しく語られなかったリンドウの人生にまつわる彼女の視点のエピソードも収録。まだまだ続けたいスズランシリーズ番外編第四巻。よろしくお願いします!

【本文立ち読み】

最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part4
[著・イラスト]秋谷イル

-目次-

前回までのあらすじ
第一話・ぐ~たらの神子、化ける
第二話・ぐ~たらの神子、出かける
第三話・ぐ~たらの神子、楽しむ
第四話・スズランのこだわり
第五話・可愛い理由
第六話・雨の日の便り
第七話・一人の魔女の人生

 

第一話・ぐ~たらの神子、化ける

背中まで届く紫色のストレートヘア。瞳は白に近い薄い水色で瞳孔の中心へ近付くほど少しずつ色が濃くなる。
服装は寝間着。一年の大半が同じ。それも絹ではなく木綿で織られた庶民向けの簡素なパジャマを好む。寝っ転がった時に余計な音が立たず感触も気にならないから読書に集中できるのだそうだ。
威厳もへったくれも無い格好だが、十四歳で年齢固定化処置を受けた彼女の容姿は二百歳超の今もなお若々しく、似合っているかいないかで判断すると前者と言わざるをえない。
つまり、ちょっと変わった髪と瞳ではあるが、基本的には可愛らしい少女なのである。
そんな彼女だが、実のところおめかしすることも無くはない。この日もそうだった。シブヤ大図書館最上階にある専用居室まで朝食を運んで来たメイド長コデマリに対し、鼻息を荒くしつつ申し出る。
「古本屋へ行くわ」
「まあ、久しぶりですね」
桜色の髪と瞳で均整が取れた体型の長身の美女。普段は口を酸っぱくして生活態度を改めろと繰り返すこの若きメイド長も珍しくにこやかな笑みを浮かべて喜んでくれた。
それもそのはず、シクラメンが外へ出るのはどうしても欠席できない公務と本を買いに行く時くらいなのである。人は日に当たらないと病気になると固く信じているコデマリはもっと日光を浴びて欲しいと望んでいるのだが、当人は本が日焼けを嫌うのと同じように自分も日に焼けると死ぬなどと言って滅多に外出したがらない。
さらに言うとシクラメンが外出を決意した時には、もう一つ良いことがある。コデマリは微笑みながら続けた。
「では、朝食後にお風呂ですね」
「嫌」
そう即答されることは想定済み。彼女の笑みは崩れない。
「では、お出かけも中止です。神子たるもの不潔なまま外出するなど許されません。三柱教の威光に関わるので」
「南西部の一部の国々では昔、お風呂には入らず香を炊いて体臭を隠すことが一般的で――」
「水が貴重だったからですよね? 今は廃れた習慣です。それにここは大陸東部のシブヤですよ、お水はたっぷり使えます」
「ううっ……」
珍しくやり込められるシクラメン。いつもならああだこうだと次から次に屁理屈をこねて入浴を避けようとするのだが、今日はどうも焦りが見える。
「早く行きたいのに……」
「でしたら早く食べて入浴も速やかに済ませましょう。もちろん三日もお風呂に入るのを渋られていたわけですから、丹念に磨き上げる必要もございます。急がないと夜になってしまいますよ」
「いただきます」
慌てて朝食にとりかかるシクラメン。いつもこう素直ならいいのにと苦笑するコデマリ。市井の古書店に目当ての本が入荷されると即座に主へ連絡が入る手筈になっている。今回外出を言い出したのもそれが理由だろう。一刻も早く手に取りたいのだ。
とはいえ急ぐ必要は皆無。彼女の望む本を勝手に売ったりする不敬な輩など、少なくともここシブヤにはいないのだから。
シクラメンもそんなことはわかっている。それでも急ぐ以上よほどの本が入荷されたらしい。
(いったいどんな本でしょう?)
元は司書だったコデマリも当然本好きの一人。気になり始めた彼女もまた、シクラメン同様そわそわしながら主の食事が終わるのを待つのであった。

朝食を終えて風呂に入り、さっぱりしたところでシクラメンは普段の彼女からは想像もつかない姿に変身した。
「我ながら見事だと思います」
珍しく自画自賛するコデマリ。鏡を見たシクラメンも頷く。
「うん、完璧」
長い髪は魔法の染料で茶色に染め、さらに丁寧に結い上げた。
この染料は八十年ほど前に現在のビーナスベリー工房の前身『魔道具開発工房』の技術者たちと共同開発した商品である。髪に数滴垂らせばたちまち全体を任意の色に染め上げる。そして別売りの解除液を使うと簡単に本来の髪色に戻せる。
おしゃれ好きな人々、特に女子に人気で現在もビーナスベリー工房の主力製品の一つに数えられている。
ただしシクラメンが協力した理由はこのため。変装用に使いたかった。彼女の本来の髪色は目立ちすぎる。
瞳の色もカラーコンタクトで茶に変更。これもだいぶ前に工房が開発した製品なのだが染髪剤と違って売れていない。高価なガラスを使う上、魔法使いなら魔法で視力矯正できるため全く普及しなかった。
でも最近はガラスの値も下がってきたしグラスチックなどより安価な素材で作ろうともしているらしい。そのうち一般人も気軽に購入できるようになるだろう。そうなったらきっと売れ行きは伸びる。
服装も当然寝間着でなく、たくさんのフリルやレースがあしらわれた白いドレスとピンクのスカートに着替えた。三柱教では青が高貴な色とされており、身分の高い者ほどそれに近い色を身につけたがる。だからあえて青系の色を外すことにより、さほど位の高い人物ではないと印象付けることが可能。
今の彼女は、ぱっと見でならシブヤまで物見遊山に来たどこぞの下級貴族の娘にしか見えない。
設定もそのまま。この姿の時の彼女の名はカガリ。トキオに住む凡庸な貴族の子女で読書好き。新しい本との出会いを求め、時たまシブヤの古書店を訪ねる。そういう設定。
いつまでも同じでは怪しまれるため偽名や身分に関しては時々変える決まり。トキオ王の協力を得て設定通りの戸籍も用意してもらってある。考案したのは八代前のメイド長。
『ほら、こっちを向いて。くすぐったい? 我慢してください。シクラメン様はたいそう可愛らしい顔立ちなので、しっかり化粧しないとすぐ気付かれるでしょう』
「ふふ」
思い出して笑うシクラメン。別の自分になるたび、あの懐かしい顔と声を思い出す。普通の人間だった彼女はとうにこの世を去ってしまったけれど、その後も似たような性格のメイドが何人も現れ、全員がメイド長になった。ひょっとしたら生まれ変わるたびにまた仕えてくれているのではないかと、そう思うことも多い。
そんな+よく似たメイド+の一人であるコデマリも、いつもとは違う姿に変装して戻って来る。
「お待たせしました」
こちらは髪型を変えて伊達メガネを装着し、メイド服から簡素なデザインのワンピースへ着替えたのみ。いかにも令嬢に仕える教育係という風体。
「では参りましょう、ヤエ」
ヤエとはコデマリの偽名。口調まで変えて促すシクラメン。コデマリもノリノリでメガネのツルを押し上げる。
「はい、お嬢様」

【続きは製品でお楽しみください】

【最悪の魔女スズランシリーズ本編はこちら】

【番外編シリーズはこちら】

 最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part1

 最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part2

最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part3

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