激愛 わたしを選んで 第五章 光堂家の思惑、引き裂かれる思い

【書籍情報】

タイトル

激愛 わたしを選んで 第五章 光堂家の思惑、引き裂かれる思い

著者時御翔
イラスト
レーベルレグルスブックス
価格200円+税
あらすじ実業家の娘・百目木佐穂、高校生。運命が動き出し、初恋が成就するかと思われた矢先、彼からの連絡が途絶えてしまう。そのまま開催された光堂家のパーティーでは思わぬ展開になり――若い二人が運命に立ち向かう第五巻。

【本文立ち読み】

激愛 わたしを選んで 第五章 光堂家の思惑、引き裂かれる思い
[著]時御 翔

目次

■光堂家の思惑

●6

結ばれた男女の朝。世界から隔離され、どこか孤立した世界からはじまった。
ふたりのことをだれも知らない朝が目を覚まし、朝陽がカーテンを透かしおとなになった男女を穏やかに起こそうと撫でていた。

「おはよ」
福望はうっすらとまぶたを開けた瞬間の佐穂に挨拶をした。
「うふ、おはよっ」
恥ずかしそうに笑いながら寝起きをじっと見られている佐穂は福望の胸に顔をうずめた。
やさしく微笑みあうふたりにほかの言葉はいらない。でもその羞恥にまみれた行為はすっかり「信じあう」と「愛情」で結ばれたものだった。
佐穂はともかく福望は誕生日を迎えていない。その誕生日に花嫁の名を告げるわけだが、それまで過ちを犯してはならない。
これは光堂家の鉄則。習わし。掟でもあった。
福望はそれらを破ったわけだが、とても満足げに口角をあげて爽快な気分で佐穂との時間を満喫していた。

福望に群がる乙女たちは花嫁として名をよばれるため、ほかのライバルを蹴落とすためにいろいろ画策しているだろう。
ふたりが結ばれたその夜も、徹夜しながら自分が選ばれるための策を部屋の中で右往左往しながら摸索しているかもしれない。
乙女たちの知らぬところですでに答えがでてしまった。花嫁になるのは佐穂であると決定した。
福望の腕の中にいることが答えだからだ。
あとは福望の誕生日会で、参列した多くの花嫁候補の中にいる佐穂の名がよばれるのを待つだけだ。
もはや不安はとりのぞかれて、佐穂の心は激しい愛で満たされていた。
「優先権を近々送る、待ってて――」
福望は腕まくらをしながら小さな頭を抱き寄せ耳もとで囁いた。
「わかりました――待ってます」
上目遣いをする佐穂の恥ずかしそうに笑う顔が赤く染まっていた。

日曜の朝はとても静かだった。おそらく平日や土曜とはちがい、ほとんどの人がまだ眠っているのだろう。
それもそのはず、福望が懐中時計で時間をみると、6:45だった。
「どこかで朝食を食べてから帰る? 柘浦のことをすっかりと忘れていた」
福望がいたずらっ子のようにすっとぼけながら言った。
「ふふふ、大丈夫かな」
佐穂もそのおどけた感じが福望にしては初めてだったから、おかしく笑っていた。
「まあいいよ。気にしないさ」
魅惑の経験はふたりをおとなへと変えたが、たがいにどんな顔でいればいいのかわからなかった。
佐穂は福望の言葉やぬくもりをギュッと握りしめるように大切に胸にしまった。

しかし――。
誕生日会が楽しみになっていた佐穂だったが、彼がした佐穂との約束が守られることはなかった。

【続きは製品でお楽しみください】

【シリーズ一覧】

 激愛 わたしを選んで 第一章 幼き日の恋慕

 激愛 わたしを選んで 第二章 変わらぬライバル

 激愛 わたしを選んで 第三章 デート講習

 激愛 わたしを選んで 第四章 涙で濡れた月光の一夜

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