
【書籍情報】
| タイトル | 最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part6 | 
| 著者 | 秋谷イル | 
| イラスト | 秋谷イル | 
| レーベル | ペリドット文庫 | 
| 価格 | 200円+税 | 
| あらすじ | オサカでの修行を終えて帰って来た年の冬。大っぴらに魔法を使えるようになったスズランは皆のためにと張り切りすぎてちょっとした失敗をしてしまう。 一方、クルクマは過去の大きな過ちを悔い、スズランたちから離れる決意を固めていた。他にココノ村への移住者メカコとロウバイのエピソードやロウバイとナスベリの再会なども収録。例によってシクラメンもいますが、今回はいつも以上にぐ~たらしています。 | 
【本文立ち読み】
最悪の魔女スズラン番外編 ティータイム&コーヒーブレイク Part6
 [著・イラスト]秋谷イル
-目次-
前回までのあらすじ
 第一話・はりきりスズラン
 第二話・しょんぼりクルクマ
 第三話・てきぱきメカコ
 第四話・そわそわロウバイ
 第五話・びっくりナスベリ
 第六話・ぐ~たらの神子、怠ける
第一話・はりきりスズラン
その年の冬、ココノ村は頻繁に大雪に見舞われた。
 老人ばかりのこの村だが、村民たちはさほど困っていない。常駐している衛兵隊が雪かきを手伝ってくれるし、今年はより心強い助っ人まで現れた。
 「除雪は任せてね! 冬なら嬉しい真夏の熱波!」
 そう言って毎朝誰より早く起床し、意気揚々と働いているのは反射光が虹色にきらめく白髪と海を思わせる青い瞳を持つ少女。創世神の神子と判明したスズランである。クルクマやアイビーに鍛えられ魔法使いとして着々と成長中の彼女は、修行の一環と称し魔法による除雪を自主的に始めたのだ。
 おかげで今年は衛兵隊まで楽をできている。スズランは魔法で簡単に雪を溶かしてしまえるので、今年のココノ村にはほとんど雪が積もっていない。
 「つまんないよ」
 「ゆきあそびしたい」
 と、不満をこぼしたのは金髪碧眼の幼い兄妹。隣の宿屋の跡取り息子モモハルとその妹ノイチゴだ。二人は雪合戦や雪だるま作りをして遊びたかったらしい。
 けれどスズランは容赦無く雪を消していく。
 「雪かきって大変なのよ。二人はいつも遊んでばかりだからわからないでしょうけど」
 「そうだそうだ」
 「あんたたちも、たまにはお手伝いするべきよ」
 尻馬に乗る二人の両親。他の大人たちも毎年の重労働から解放されてスズランに感謝している。
 「ありがたいことだねえ、流石は神子様だよ」
 「出て行った若い連中にも見習って欲しいもんだ」
 「まったくだ。スズちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたい」
 「うんうん」
 働き者のスズランへの感謝と賛辞が、村から出て行った若者たちへの愚痴に変わるのはいつものこと。
 かくして今年の冬は雪に悩まされず、ただただ平和で穏やかに過ぎていくと皆が思っていた。一部の例外を除いて。
 その例外とはスズランの育ての両親。栗色の髪で三白眼が特徴の養母カタバミと焦げ茶の髪と瞳で優しげな顔に眼鏡をかけている養父カズラ。
 二人は毎朝はりきって早起きと除雪を繰り返す娘の姿に、むしろ不安を抱く。
 「大丈夫かしら……?」
 「ちょっとやる気が過ぎるかもね……」
◇
冬半ば、二人の不安は的中した。
 連日朝早くから村中を走り回っていたスズランは見事に風邪をひいたのである。
 「ううっ……雪が……雪がまた降ってるのに……」
 「いいから大人しく寝てなさい」
 「無理しすぎたんだよ」
 額に乗せた氷嚢を取り替え、珍しく呆れ顔で娘を見つめるカタバミと、そっと頭を撫でつつ諭すカズラ。
 今日も大雪だが、この状態のスズランを外に出すはずもない。彼女は最近買ってもらった自分用のベッドで安静にしている。
 「治るまで外には出さないからね。みんなにうつしたくないでしょ」
 「はい……」
 「雪かきなら心配ないよ。いつも通りノコンさんたちが手伝ってくれたから」
 「うん……」
 「これに懲りたら、今後無茶はしないこと」
 「うう……」
 「頼られて嬉しかったんだよね」
 「……うん」
 父の言葉を素直に認めるスズラン。
 ナスベリの一件で神子だとバレて以来、村の皆との間に少しだけ壁ができたように感じていた。一方的な思い込みかもしれないけれど、もし本当にそうだとしたら彼女には悲しい。
 けれど今年最初の雪が降り始めた時、村の大人たちが揃って嫌な顔をしながら言ったのだ。
 魔法で雪を消せたら、楽なのにねえ――と。
 それをスズランは頼ってもらえたと解釈し、うっすら感じていた壁を崩すべくはりきって除雪に勤しんでいた、というわけである。
 父は言葉を続ける。
 「スズ。スズの魔法はたしかに凄いけれど、みんなそれがあるから君のことが好きなわけじゃないよ。もちろんその素晴らしい才能は積極的に伸ばして活用すべきだと思う。でも君はこれからも僕とカタバミの娘で、この村の子なんだ。みんながそう思ってる。だからもっと周りを信じて頼ってほしいな」
 「うん……」
 スズランも今回は失敗したなと反省中。ただ、そんな反省の念の裏側、密かに隠れた本心ではまだ少しだけこう思っていた。
 (もっと上手にやらなきゃ)
 こんなナリだけれど、本当はもう大人なのだから。体調をしっかりと管理して周囲に迷惑かけないようにしたい。その上でもっともっと皆の助けになろう。
 ――彼女の正体は『最悪の魔女』ヒメツル。だから、あの頃に犯した罪を贖いたいと、そういう意識が働いてしまうのだろう。
【続きは製品でお楽しみください】
【最悪の魔女スズランシリーズ本編はこちら】
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【番外編シリーズはこちら】
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