月灯りの絆 君と永遠に (六)君と永遠に

【書籍情報】

タイトル月灯りの絆 君と永遠に (六)君と永遠に
著者かにゃん まみ
イラスト尾張屋らんこ
レーベルフリチラリア文庫
価格350円+税
あらすじ二重人格として守の中に眠っていたもう一人の人格『マモル』は月丘の遺志を継ぎ、女宮殿の女性たちや世界中の人間を絶滅させようとする。その悲劇は女帝であるカエデと月丘の悲しい愛の物語がすべての始まりだった。
瑠璃と側近達はそれを阻止しよう、もう一人の守を取り戻そうと動き出す。そしてついに、すべての謎が明らかになる。登場人物達のそれぞれの愛の未来も描いたSS3篇を含む長い物語の最終巻です。

【本文立ち読み】

月灯りの絆 君と永遠に(五)守の覚醒
[著]かにゃん まみ
[イラスト]尾張屋らんこ

目次

登場人物紹介

月灯りの絆 君と永遠に(六)君と永遠にスペシャルSS
一、ツグミとキリカ。新しい旅立ち
二、隆二とマモル~ある一つの結末~
三、禁断の果実

登場人物紹介

瑠璃(るり)
月の最下層の住民だったが、守に地球へ連れてこられた。その後、両性とわかり、女宮殿に。そして南女宮殿の女性になったが。

神咲守(かみさきまもる)
地球に住む生物学者。植物を愛する温厚な性格で、人を差別しない。博愛主義者。周囲からは変わり者扱いされている。
瑠璃と結ばれてから体に異変を感じ、自分の中にもう一人の人格、マモルが存在することを知る。

マモル
守の中に眠っていたもう一人の邪悪な性格の人格。

神咲隆二(かみさきりゅうじ)
弟の守を愛している。その愛は幼い頃守に求愛されたのがきっかけらしい。

如月(きさらぎ)アキト
空手家如月流の継承者。瑠璃の側近で、瑠璃を愛している。成績は普通だが、武道においては右に出るものがいないほど強い。

如月(きさらぎ)ツグミ
アキトの兄。子供の頃の事故で負った大怪我の影響で如月流の跡継ぎを断念、以後勉学に励み優等生になる。瑠璃の側近だったが今は寺に入り僧侶として修行をしている。

キリカ
神咲家の末っ子だった。無口で真面目な性格。礼儀正しい。瑠璃の側近。文武両道、フェンシングが得意。ツグミを愛している。

ミュート・モンロー・ファミル
信仰深い。元、神咲家の使用人。料理人。瑠璃の側近。

霧宮魅来(きりみやみく)
南宮殿に住む上級女性。守を愛していたが、自分にとって一番大切なのは幼いころから一緒にいた側近、白蓮であることを悟る。

李(り)・白蓮(はくれん)
魅来の側近。彼女の意思を常に尊重している。彼女への愛を自覚し、魅来と両想いになった。

ファルス・デ・ミール
上級女性のエレナ・ラシールの側近だったが、男遊びが災いしたのか『意思』に感染、異形の者となる。

鏑木桜(かぶらぎさくら)
宮殿の女性。瑠璃の親友。写真家としての才能がある。

海倉誠一(うみくらせいいち)
両性である瑠璃の担当医。

新城昴(しんじょうすばる)
女宮殿直属の軍の中佐、南宮殿の最上級の女性に仕える、第一側近で、女性に対し忠誠を誓っている。
マモルからの攻撃にダメージを受けた。

ミライト・レイ
守の親友。長い間イギリスに渡っていた。医者だが、博識で生物学者兼科学者でもある。

SAEKA(さえか)
ミライトの作ったアンドロイド。笑うことを知らない。

花卉奈(かきな)
女宮殿の女帝の総称。誰がなってもこの名前で呼ばれる。

三上良孝(みかみよしたか)
月丘の才能に惚れこみ一緒に月の地下にある月丘の新たな研究所へついていく。過去に守の父親になりすまし、守を神咲家の養子にした。

月丘(つきおか)カエデ
日本の女宮殿を統べる女帝。
月丘忠志(つきおかただし)
過去に霧宮家の研究所にいた。ワープ構造を編み出した比類なき天才。ただ、数年前から失踪したままであったが、今は『意思』として地球のメインコンピューターに存在し、マモルに指示を与えている。

ここまでのあらすじ

人類が地球だけではなく月にも定住するようになってから数百年、現在は火星への開発が進みつつあった。
宇宙開発が進む中、地球では数百年も前からある問題を抱えるようになる。女性の出生率が下がり、人類の女性の数が減ってしまっていたのだ。
原因ははっきりとはわかっておらず、女性は少数であるゆえに、さらに母体であるため、地球で丁重に扱われ、女宮殿という仕組みの中で生きていた。主人公の瑠璃は月の一番階級の低いドームに赤ちゃんの頃捨てられていた。そしてそこから抜ける事もできず、そこでしか生きて行くことができなかった。
苦しい生活の中、瑠璃は男娼としてしか生き永らえなかったが、ある日地球から来た青年、神咲守に救われることになる。
地球に来た瑠璃は神咲家の奉公人であったが、ある日ドームにいた時から感じていた体の異変で、女性特有の月経の症状が出ると共に、自分が両性であることを知る。
女性として出産可能であると認識された瑠璃は女宮殿へ連れて行かれ女性として生きることになる。
宮殿内に住む霧宮魅来は以前から神咲守に片想いしていた。
守と瑠璃との仲を知りつつも、魅来は強引に守を自分の側近にさせる。しばらく瑠璃と守はお互い離れたところで暮らしていたが、守の兄の隆二の守への執拗な愛が守を追い詰め、瑠璃と女宮殿外へ逃げた。
二人はそこで改めてお互いを強く思っていることを再確認する。
瑠璃は必ず魅来より上のレベルになって、守を側近として迎え入れる約束をし、魅来と対峙することを決意する。
魅来は瑠璃よりもレベルの高い女性であるが、瑠璃も女宮殿に入ってから守の弟のキリカや如月ツグミ、アキト、また神咲家で同じ奉公人だったミュートを側近として、女性としてのレベルを次々と上げて行った。
そして今まさに、その魅来のいる南女宮殿への昇級試験に臨もうとしていた。
南女宮殿の女性になった瑠璃は魅来よりも上のレベルになると、神咲守をやっと自分の側近として迎い入れることができた。
瑠璃と守はやっと一緒に暮らせるようになったのだ。
しかしその頃世間を騒がせている女性と周囲の側近達の大量殺人事件はついに南女宮殿にまで及ぶことになり、犯人を追及し続けている女宮殿の軍の新城や霧宮の研究所にいる隆二、そしてミライトたちは次第に犯人が誰であるかおぼろげながら掴みかけていた。
それは女性や側近達を殺した異形の者の?NAと瑠璃のそれが似ていたからである。
異形の者が口にするマスターが瑠璃だと疑った軍は瑠璃を塔に幽閉する。
だが瑠璃自身が悪の権化だと特定するには瑠璃はあまりにも何も知らなくむしろ瑠璃は傀儡に過ぎないのでは? と思うようになる。
異形の者達が口を揃えて指し示すマスターとは誰なのか?
その姿が暗闇から露わになる瞬間、女宮殿に巨大な宇宙船が現れた。
そしてその正体は瑠璃が一番大事に思っていた、神咲守だったのだ。
神咲守は二重の人格を持っていて、しばらく表にその裏の顔を出すことはなかった。果たしてどちらの守が本当の守なのだろうか。

白い世界にボクは膝を抱えるようにうずくまっていた。ある日黒い点が現れる。次第に大きくなったシミは、二人の両性の人間が絡み合った形をした模様に変わった。
瑠璃と守は愛し合う運命にあり、二人の愛が両性とも交じり合う時がボクの覚醒の時。
これは必然だ。ボクはその時をずっと待っていた。父はひそかにメインコンピューターに『意志』として存在し、世界を操りながら彼らを誘導して行った。
二人の絆が深まる度、抑えつけられているボクは何もない絶望だけの空間で憎しみの情念だけを育てて来た。
でも虚無のこの空間からとうとう出られる。ボクは口角を上げ白い歯を見せて笑った。目も歪めて笑った。
白い床を爪でかきむしると血が滲む。それが快感で快感で。
今度こそ世界の息の根を止める。
そしてボクの世界を取り戻さなきゃ。
瑠璃はどこ? 君を誰よりも愛して必要としているボクがやっと君のところに還れる!

マモルがベッドの上で目を覚ますと、部屋全体が不自然なほど植物のツタで覆われていた。
瞼をゆっくりと開くと傍らに見慣れた人物がいる。
守ならその人物に警戒するだろう。けれどもうすべてを理解していたマモルは冷静だった。自分の体から汗の匂いを感じた。
隆二は彼の心拍数を確認していた。
「守、目を覚ましたな」
指を軽く動かしてみた。まだ多少体がだるい。
「あの時は覚醒のエネルギーが爆発して動けたが。しばらく守の中で眠っていた。仕方ないね」
「……?」
怪訝そうな顔をする隆二に、マモルはけだるそうにふふっと笑った。
「何がおかしいっ」
隆二はこちらを睨みつける。咄嗟にマモルの襟首を掴んだ。
「守、お前は重罪人だ! もう帰る場所はない。お前を庇う者も誰もいない。神咲家も見放す!」
隆二の胸にマモルはそっと手を置き、上目遣いで見た。
「神咲家などくだらない。もはやどうでもいい存在だ」
「……!」
「今あなたがいるところはどこ?」
マモルの問いかけに隆二は動揺する。
「お前が俺の脳に直に語りかけ、体が自然と動いた。そして気がつくとこの場所にいた」
「ボクの意志があなたを必要としたんだよ」
「わからない。一体何がどうしたというんだ? お前は一体……。俺はお前が誰だとしても……!」
「可哀想に、この状況になってもまだ頭の中は『守』の事だけ。長い間ずっと勘違いして奴をボクだと思いつづけていたんだものね」
マモルは隆二を同情の眼差しで見る。
「いいや、それでも兄さんらしい。折角目を覚ましたのに、もっと歓迎して欲しかったな。あなたが望んでいたマモルがやっと戻ってきたっていうのに」
隆二はマモルの言う言葉を理解できずに混乱した。
「あいつ(守)にいつまでも押さえ込まれて苛ついていたのはボクの方だ。もう扉は開かれたんだよ」
マモルは隆二の腕を掴んだ。
「守……?」
マモルは熱い視線を隆二に向け微笑んだ。
「守じゃない、マモルだよ、兄さん『ボク』を忘れたの?」
目覚めたばかりのマモルは少しアンニュイな顔を向け微笑む。
「ボクは折角神咲家とあなたに馴染んで、あそこからすべてを始めてやろうと思っていたのに、あの日、父の助手の三上に連れられて再び研究所へ戻った。そしていまいましい人格を埋め込まれたんだ。本来のボクを封じ込めてね。あなたが望んでいたボクが封印された。ボクの様子がおかしいとは思わなかったの?」
「まさか、そんな……!」
隆二の瞳の奥が明らかに動揺している。
「帰る場所がない? ううん、ここがボクらの住処なの。兄さんはこれからはボクの元でしもべとして生きて行くんだ。だって一緒に宇宙船に乗っちゃったものね。ボクが守にされてから何年経ったのかな? 体も、こんなにいつのまにか大きくなってる、凄いね……」
マモルは自分の体を見つめると、服のボタンを外しはじめた。前をはだけさせると自分の体を手でまさぐる。
「もうこんなになってる」
自分を見つめる隆二の腕に指を滑らせると掴み引寄せた。甘い瞳に隆二はあっという間に誘われ、しがみつく体をすぐに抱きすくめた。
背中と腰に腕を回す。マモルは唇を開くと隆二と唇を重ね、口の中に忍び込む。迷う隆二の舌を自分の舌で絡め取ると、すくうように軽く吸った。
隆二の全身がぞくりとし、その甘い誘いに瞬時に引き込まれるとマモルの上に被さった。しばらく二人は病室のベッドで互いの舌を吸い合った。それは自分が仕掛けるよりも遙に密度の濃い責めのキスだった。
(守からのこんなキス、今まで味わった事がない)
半分意識が遠のきそうになると、意地悪くマモルは唇を離した。まだそれに溺れていたい隆二が彼の舌を追いかけようとする。
「あぁ、まだだ……」
「駄目。続きはまた今度。ボクのしもべでありつづけるならいつでもキスをしてあげる。いつでも抱かせてあげる」
(ああ……。そうだ。この守、いや、このマモルに覚えがある。しぐさ、癖、話し方。そうだ、このマモルが本当の……!)

(息苦しい……。ここはどこ?)
瑠璃の眼前には瓦礫の山の荒れ果てた荒野が広がる。
崩れかけた建物はかつては白く広大な建物だった。
緑も真っ黒に焦げついて、折れた墨の塊のような木々の残骸が無残にもちらばっている。瑠璃はその場所に立ち尽くしていた。
ふと足先に不恰好な小さな人形が触れた。継ぎはぎだらけで汚れた人形。
(そうだ。これは俺が宮殿に居る時に作った守の人形だ)
かつて宮殿の学校に通い、教室にいた時に一緒に女性と作った。
手に取った瞬間、人形がぼろぼろと崩れ落ちる。その様子に胸が苦しくなると立ち上がり、辺りを見回した。
「皆どこ? 桜、アキト、キリカ、ミュート、ツグミさん、お願いっ、誰か返事して! 皆! まも……る……」
目の前に白い顔をした側近達がいた。
その前で守の苦しそうなヴィジョンが浮かんだ。
(守!)
血まみれで苦痛に顔を歪ませながら、守はそのまま白い世界に溶け込むように吸い込まれていく。

瑠璃は夢から目を覚ますと体には白い布が巻かれていた。
瑠璃の全身は水底にいるような光と影がキラキラと揺れるように反射し、光はブルーの淡い濃淡やライトグリーンが白い光に混じるように揺れて輝いている。
辺りは一面草木に覆われていた。瑠璃は一段高い場所で大きく固い葉の中に横たわっている。
生い茂った植物の中に見慣れた幾つもの植物を見つけた。
(白い薔薇の花……)
瑠璃は湿気を含んだ生暖かな空気を肌に感じていた。
ここちいいと感じるほど、そこは懐かしくもあり、瑠璃の胸に切なさがこみ上げた。自分の頬に手の甲を当てるとしっとりと濡れている。
(ここがどこか俺は知っている……)

「瑠璃、目が覚めた?」
瑠璃の傍らには、自分と同じ顔をした褐色の肌の少年が座っていた。彼は瑠璃と同じような長い髪を束ねている。目を細め、柔らかな笑顔を向ける。
「僕らはね、双子だったんだ。あの丸ガラスに入っていたんだよ。右が僕、左が瑠璃……。僕、ずっとこの日がくるまで待っていた。すべては君が両性として目覚めた時から起きたんだ。僕には残念ながら女の生殖器は働かないみたいだけどね」
天井の中央の幹に丸いガラスが、幾つも果実のように実っていた。中には液体が入っていて、コポコポと音を立てていた。
瑠璃は起き上がりそれを眺めた。瑠璃の瞳の中に映る泡は次第に霞んで行く。耐え切れず顔を手で覆った。
「瑠璃、どうしたの? 泣いてるの?」
顔を上げ瑠璃は褐美から目をそらし、大きな葉のベッドから降りた。床は湿った草の感触がする。
「どこに行くの、瑠璃!」

瑠璃が部屋から飛び出すと、薄暗がりの廊下も何もかもそれは草やツタで覆われていた。瑠璃は逃げるように走り出した。遠くで褐美の声が聞こえる。途中でツタに引っかかりそうになりながらも、どこへ向かうのか自分でもわからない。しかし、ただ現実から逃げたくて走りつづけた。
(嫌だ、アキト、キリカ、ミュート……。皆のいるところに俺は帰るんだ。そして、守、あなたの元へ!)
階段を見つけ、ひたすら下る。どこまで行っても下がわからないほど遠く長く続く。
下りきると広間に出た。
しかしそこからまた通路が幾重にもあり、瑠璃はひたすら彷徨った。
光が灯っている部屋を見つけると、そこに迷い込む。
しかし、そこには瑠璃達がいたような暖かさはなく、床はコンクリートで素足がヒンヤリする。背中がぞくりとするような寒気を感じた。
瑠璃は震えながら進む。奥に円筒のガラスが並んでいた。
水に入った何かがそのガラスの中に浮かんでいる。
「っ誰か、いるの……?」
瑠璃はその円筒に近づき目を凝らした。
「あっ!」
思わず目をそむける。円筒の中には人型のような異形が形も無残に浮かんでいた。
目が飛び出ていたり、腕が小さく歪んだり、人の形すらとどめていないものもある。
あまりの恐ろしさに瑠璃はその場にしゃがみこんだ。
(恐い、恐いよ。誰か助けて……)
「どうされたのですか?」
混乱している瑠璃が振り返ると、そこにはファルスと側近達が立っていた。
「お前たち……どうして……? ここは……?」
「ここはあなたさまのような崇高な存在を如何にして作り出せるかと、実験台になった人間達の場所」
瑠璃の不安そうな顔を見てファルスは不気味に微笑んだ。
「しかしご安心を。こいつらは皆死刑囚なのです」
「死刑……囚?!」
「月には監獄があるのです、ご存知ですか?『生物科学研究所』とは言え、研究所とは名ばかりで併設している監獄から死刑囚を拝借して、実験台として利用していたところです」
ファルスの淡々とした言い方に瑠璃は心が騒めいた。
「俺を女宮殿に返してくれ! 俺にはまだしなきゃならないことが沢山あるんだ!」
「宮殿? ここは月の旧エアポートの地下の研究所。ここに研究所があることはごく限られた人間しか知らない。あなたさまの故郷なのですよ」
「こ、故郷……」
「お可哀想に、あのまがいものの守に散々振り回されたせいで、混乱されているみたいですね。さ、本物のマモルさまがあなたをお待ちです。どうぞ、こちらへ……」
「嫌っ、近寄らないでくれ!」
「あなたさまに危害は与えません」
何がどうなっているのか、まだ瑠璃には理解できなかった。
瑠璃はファルス達に連れられて、電灯が点滅する部屋に連れて行かれた。
そこは見たことがある空間だった。
「ワープターミナル……」
そのままその部屋に入ると、すぐにファルスは手をかざし、目の前に透明のモニターが現れた。何か操作をすると一瞬ですぐに部屋の扉が開き、眩しい光で瑠璃は思わず目を伏せた。
先ほどとは全く違い、そこは美しい宮殿のような場所だった。
「さ、参りましょう……」
大理石でできたような内装の廊下を進むと、大きな扉の前についた。目の前の扉のマークを見て瑠璃はぎょっとする。それは持っていたペンダントの奥に隠されたマークと同じものだった。
重厚な扉がゆっくり開くと、目の前の玉座にマモルがいた。
「守……!」
瑠璃はファルスの手を払いのけて、マモルの元へ走りよった。
マモルは微笑んで立ち上がると、瑠璃に手を差し伸べる。
「瑠璃」
「守、守!」
縋りつく瑠璃をマモルは抱きしめた。
「お帰り瑠璃。どれだけこの日を待ったことか。長かったね」
「守?」
「いいかい? よくお聞き。いままでのボクはボクであってボクじゃない……」
「……?」
「今までボクは三上が作った別の人格に邪魔され、瑠璃に可哀想な事をした。三上はお前をここから引き離すのに必死だった。第六ドームに送って僕らを一生引き合わせないようにしたとしても、父の意思があらゆる可能性を試算して、僕らを引き合わせた。すべては父の手の内だったのだ。全世界のマザーコンピューターに繋がっている父が逃すわけが無い。三上の浅知恵など所詮そんなものだ」
「……」
「瑠璃、お前はボクの父が作った新人類なんだよ」

【続きは製品でお楽しみください】

 

【シリーズ一覧】

 月灯りの絆 君と永遠に (一)運命に抗う月の男娼【改訂版】

月灯りの絆 君と永遠に (二)白薔薇の呪縛、兄に溺愛、蹂躙された弟の悲劇

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 月灯りの絆 君と永遠に(五)守の覚醒

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