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【書籍情報】
タイトル | 愛してるの返事が欲しい |
著者 | 如月一花 |
イラスト | モルト |
レーベル | ヘリアンサス文庫 |
価格 | 200円+税 |
あらすじ | 夢の中で謎の男性から『愛してる』と言われ続ける美月。駅で男性を見かけたと思い声をかけるが別人だと言われてしまう。しかし、入社先で優は係長だった。 仕事は厳しく、夢の人とはかなり雰囲気が違うが、美月はひと目ぼれしてしまう。ちょっと不思議な恋愛小説。(毎月一話配信中) |
【本文立ち読み】
愛してるの返事が欲しい 1st message
[著]如月一花
[イラスト]モルト
『美月、愛してます。愛してる、美月』
夢だと分かっているのに、秋葉美月(あきばみつき)は心地よさに包まれ、目を開けることが出来なかった。
まるで催眠術でもかかっているかのように、その言葉を聞いていると恋に落ちていくような気分になる。
目の前には憂いを帯びた見知らぬ長身の男性が、美月を愛おしそうに見ていた。
切長の目は伏せていて、目元にほくろがあるのが印象的だ。
しかし、今にも泣き出しそうだ。
(どこかで聞いた声。優しい声)
『美月、愛してます。愛してる、美月』
頭の中でずっと囁かれて、美月は声の主に恋をしていた。
この夢を半年以上も見ているからだ。
好きな男性が夢の中の人だなんて言ったら笑われるだろうが、現実では恋もままならないような生活をして、最近はスキルアップの為に転職をしたばかり。
恋に仕事に充実した生活なんて、憧れのまた憧れだ。
(こんな風に思ってくれる人がいたら……)
しかし、頭が冴えてきて、目をふっと開けると美月はベッドの上にポツンと一人で眠っている。
「またあの夢。欲求不満なのかな。それとも、まともな恋愛しろってお告げとか」
美月は独り言を言うと、また布団に包まった。
寒くなり始めていて、最近は布団がないと寒くて仕方ない。
「眠ったら、またあの声が聞こえるのかな……夢の人に会えたら面白いのに。そんなことできないけど」
そう言って、美月は目を閉じると、今度は夢を見ることなく朝を迎えた。
今日から新しい会社で働くのだ。
身支度を整え、肩より少し長い黒髪はクリップで一つにまとめ、メイクは清潔感を重視して整える。紺色のブラウスに黒のフレアスカートを履いて、トレンチコートを羽織った。
バッグにはメイクセットや手帳、ハンカチやお財布、水筒を入れて、すぐに部屋を出る。
慌てて鍵を閉めたので、鍵が手から滑り落ちた。
チリンチリン、と鍵につけている鈴が思い切り鳴ってしまう。
美月は慌てて拾ってバッグに押し込むと、職場に急いだ。
(外で落とさなくてよかった)
美月は最寄り駅に向かって歩き、来た電車に飛び乗った。
そして数駅乗って降りると、人混みに紛れて改札を抜ける。
思わずため息を吐いてしまうと、ふと、その中に夢で見る男性がいた気がした。
まさかと思いつつ、確かめようと追いかけると、確かに夢の男性だと分かる。
(目元にほくろ、そしてあの長いまつ毛!)
夢で散々告白されて、美月は少し勘違いしていた。
現実にいるわけがない、そんな考えを飛び越えて会ってみたいという欲望が強くなっていたのだ。
思わず、肩を叩いて男性を振り向かせる。
「すみません!」
「……ん?」
「私、あなたのこと知ってると思うんです!」
「はい?」
「あの……あの……好きです!」
美月はやっと言えたと思ったが、男性は曇った表情を見せる。
胸が早鐘を打ち出して、嫌な予感がし始めた。
「人違い……じゃないか?」
「ずっとずっと、夢の中で。ここ一ヶ月。もっと、半年くらいはあなたに告白されまくってます。だから、私も返事をしないといけないと思って!」
美月は真剣に言った後で、男性がクスッと笑ったことで現実に引き戻された。
「それ、何かの病気だ」
「違いますっ」
「お疲れみたいだから、今日は仕事を休んで帰ったら? では」
「待ってください…っ」
「人違いだ」
「あのっ」
美月は目の前にいた男性は間違いないと実感があった。
けれど、会ったこともないのだから、彼の言い分が正しい。
(これじゃただの変な人だ。夢の中の人を探すなんて、もうやめよう)
美月はとぼとぼ会社に向かった。
人の波に飲まれて会社に着くと、美月は肩を落とした。
(初日早々、なんかバカなことしちゃったな)
周りは仕事をすでにし始めていて、美月は人を捕まえて仕事を教えて欲しいと言わないといけないと、肩を落とした。
思ったより忙しそうな会社で、転職してきた美月を気に掛ける人もいない。
「駅の変な人」
声の主に驚いて振り向くと、あの男性が苦笑いをして立っている。
「あの、私今日からここで働く秋葉美月です。駅ではすみませんでした」
頭を下げると、彼は苦笑する。
「どこか悪いわけじゃない?」
「いえ、同じ夢をずっと見ていて、その人に似ていたから思わず。すみません」
「俺はこの部署の係長をやってる。逸島優(いつしまゆう)だ。何か分からないことがあったら、なんでも聞いてほしい」
「はい……」
(あんな告白した相手が上司なんて、気まずい……)
「とりあえず、資料作り頑張ってくれるかな、以前もそんな経験があるって聞いたけど」
「はい。資料作りなら得意です」
「じゃあ、早速、仕事任せていいかな。簡単な資料。それが終わったら、会社の中を案内する」
「分かりました」
美月はとりあえず、逸島の誤解は解けているようだと思ったものの、印象は最悪だろうと思った。
いくら夢に何度も出てきているからといっても、あんなことをする部下がいるのは嬉しいとは思えない。
仕事で挽回しようと、資料を読み込み丁寧に作り始める。
一時間くらいで出来上がると、美月は逸島にデータを送った。
すると彼がそっと席を立ってこちらに来る。
「即戦力になれそうだな」
「よかったです。資料作りくらいしか出来なくて」
「が、もう少し添付資料がほしい。後、作成時間をもっと短く」
「は、はいっ」
「うちの営業部はかなりうるさくてね。じゃあ、会社の中を案内する」
美月はしょぼんと肩を落としながら、逸島の後を追って歩いた。
得意だと思っていた資料作成に厳しく言われてしまったからだ。
以前の会社は上手くやっていたのに、逸島の見る目は以前の会社と違って少し厳しいような気がする。
頑張らないといけないとぼんやり歩いていると、彼から言われた。
「大丈夫か。この資料室、よく使うから覚えておいてくれ」
「は、はい。すみません」
「以前の会社だと、あまり上司から注意されなかったのか?」
「……はい」
「悪いな。適当な雰囲気が嫌いなんだ」
(適当……)
さらに厳しく言われて、美月は逸島が夢の中の人だと考えていたことを恥じた。
到底あんな甘い言葉を言うとは思えない。
(夢だから、都合のいい存在が出てくるんだろうな。逸島さんは偶然似てただけ)
社内をぐるっと周り歩くと、少し早めの昼休憩になった。
もちろん、逸島は自分の仕事に戻り、美月は食堂に置いていかれた。
仲良く食べようなんて雰囲気は微塵もない。
(気まずい空気の中で食事も嫌だし。いいんだけど)
美月は適当におすすめ定食を頼んで食べると、美味しさなんて分からず、食べ終えてしまった。
全部逸島のせいにしてしまいたいくらい、今日は空回りをしている。
午後は挽回したいものだが、資料作りを今後厳しく言われそうだ。
肩を落として席を立ち食器を片付けると、美月は自分のデスクに戻った。
周りは食事休憩をしつつも、忙しそうに働いている。
(ブラックなところに来ちゃったかなぁ)
そう思って、パソコンに向かおうとした時だ。
「ハンカチ落としたぞ」
いきなり逸島に声を掛けられて、美月はビクッと肩を振るわせた。
「ありがとうございますっ」
「そんなに驚くことないだろ。ポケットから落ちたから拾っただけだ」
「すみません。私、落とし物ひどくて」
その瞬間、美月は逸島に、以前もハンカチを拾ってもらったような気がした。
しかし、彼と会ったのは今日が初めてのはず。
(変なこと言ってまた不審がられても……)
「最近じゃ、なくさないように何にでもエアータグ付ける人もいるらしいぞ」
「ハンカチにまでつけません。落としちゃったら、その時だなって諦めます」
「俺もよく物を落とすんだ。鍵にはエアータグがついてる」
「そうなんですか? 意外です。想像できませんけど」
「気がつくとなくなってる。文明の利器でなくさないようにしてるから、周りは俺がドジだって気が付かないけどな」
真面目な顔で逸島が言うので、美月は思わず微笑んだ。
さっきまで怖そうな人だと思っていたのに、意外にも可愛らしい面もあるみたいだ。
とはいえ、自分の夢の人に似てるとこれ以上は言えないが。
「じゃあ、後で仕事を頼む。新製品の説明のための資料がほしい。初日から忙しいと思うが、よろしく!」
そう言って逸島は去ると、彼が席に着いたと同時にファイルが送られてきた。
開けてみると資料がどっさり入っている。
(これを元に資料を作れってことですね!)
初日から容赦なく使われて、美月は帰宅するとシャワーを浴びて、ご飯も食べずに眠ってしまった。
「あっあっ!」
美月は自分の淫猥な声にハッとした。
裸でベッドの上に横たわっている。
「美月、ここ、トロトロ」
そして、そんな美月を組み敷いているのは逸島だ。
(な、なんで^!?^ 何が……どうなって……)
美月の混乱をよそに、逸島は蜜壺を中指で思い切り掻き混ぜてくる。
「あっああああ!」
グチュグチュと激しい水音を立てて、内壁を擦り上げられると腰が浮くような錯覚すら覚える。
逸島は美月の顔を見つめながら、指を増やしてグチュグチュと指の抜き差しを始めた。
「逸島……さっ!」
「美月、こんなに咥え込んで喜ぶなんて。いやらしい女だな?」
「ちが……私……」
「でも、これがお前の本音だろ?」
「え?」
美月は混乱した。
夢なのか現実なのか本当に分からない。
(逸島係長が、こ、こんなこと……)
「ほら、もっとよく見せろ。美月の恥ずかしいところ、全部舐めないと気がすまない」
「ま、待って。逸島係長っ」
「待つわけないだろ?」
思い切り開脚させられて、美月の秘丘は丸見えになった。
恥ずかしい思いとは裏腹に、なぜか心の中が高揚して満たされる。
(どうしてこんなに嬉しいの。ずっと前からこうされたかったみたいな……)
ジュルッと蜜を舐められて、美月は震えた。
「んあっ!」
「美月……ナカ、たっぷり舐めるからな。しっかりイケよ」
「んっ」
「声。我慢するな。せっかくの時間だろ?」
「でも……こんな……」
「可愛いやつ」
言われて美月は赤面した。
あの逸島が、美月を可愛いと言ったのだ。
しかも、こんなに激しく求めてくる。
(夢……。これは夢……。でも、すごく嬉しいの……なんで……っ^!?^)
舌先が内壁を思い切り擦り上げる度に美月は体を震わせて悦んだ。
腹の奥ではジンジンと切ない想いが込み上げて、もはや逸島に何もかも捧げたい気持ちにすらなっている。
「逸島係長……私……」
「たっぷり注いで、孕ませてやるよ」
「……っ!」
【続きは製品でお楽しみください】
【シリーズ続話】
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